🍵京都の寺院を深く知る!仏教用語の基礎知識#1058
京都のお寺を訪れる際、ただ建物を眺めるだけでなく、その背景にある仏教の文化や歴史を知ると、感動は倍増します。この記事では、京都の寺院散策が一層楽しくなる「声明」「僧録」「聖」という三つの重要な仏教用語を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
- 仏教とともに日本に伝わり、天台宗や真言宗を中心に発展した、仏を讃える儀式音楽や声楽を何といいますか。
- 唐の天台山から声明を伝え、日本で天台声明を大成した人物は誰ですか。
- 室町時代、禅宗寺院の最高位の役職として、五山・十刹などの寺院を統括し、人事を差配した役職は何ですか。
- 上記3の役職を最初(初代)に任じられた人物は誰ですか。
- 特定の宗派や権力に属さず、市井(町中)で民衆を相手に説経活動を行い、「市聖(いちひじり)」とも呼ばれた平安時代の宗教者の代表的な人物は誰ですか。
☆回答は記事の最後にあります。
これらのキーワードを頭に入れて、一歩深い京都の旅に出かけましょう。
目次
はじめに:寺院散策がもっと楽しくなるキーワード
京都には歴史あるお寺がたくさんありますが、その背景にある仏教の教えや文化を知ると、見方がぐっと深くなります。ここでは、京都のお寺の歴史や文化を学ぶ上で知っておきたい、特に重要な三つの仏教用語を解説します。
1. 声明(しょうみょう):仏を讃える「声の芸術」
声明とは、仏教とともに日本に伝わった仏を讃える声楽、または儀式音楽のことです。
- 成立と構成: インドの「梵語讃(ぼんごさん)」、中国の「漢語讃(かんごさん)」、日本の「和語讃(わごさん)」が各宗派でまとめられ、継承されてきました。
- 中心宗派: 特に天台宗と真言宗の声明が二大中心となっています。
- 天台声明の祖: 唐(中国)の天台山から声明を伝え、日本で大成させたのは、比叡山延暦寺の僧である**円仁(えんにん、慈覚大師)**です。
声明は、お経を読むという行為を超えて、儀式に荘厳な雰囲気を加え、聴く人に感動を与える「声の芸術」として発展しました。
2. 僧録(そうろく):禅宗寺院の統括役
僧録とは、室町時代に禅宗寺院を統括するために設けられた最高の役職のことです。
- 役割: 京都の五山・十刹・諸山に列せられた格の高い禅寺を管理し、寺の住職や僧侶の人事権を差配するなど、強大な権限を持ちました。
- 起源: 初代僧録司に任じられたのは、室町幕府三代将軍の足利義満に信任された**春屋妙葩(しゅんおくみょうは)**です。
- 場所: 僧録の役所である「僧録司(そうろくし)」は、相国寺(しょうこくじ)の塔頭(たっちゅう)である**鹿苑院(ろくおんいん)**の院主が代々務めるのが慣例となりました。
僧録の存在は、幕府が禅宗を国家管理体制下に置く上で非常に重要な役割を果たしました。
3. 聖(ひじり)/聖人:民衆とともに歩んだ宗教者
聖(または聖人)とは、特定の宗派や国家権力の枠組みに囚われず、独自の修行や布教活動を行った在野の宗教者を指します。
- 活動の特徴:
- 特定の宗派に属さない。
- 権力に従わず、世俗から離れた深山幽谷(しんざんゆうこく:山奥の静かな場所)で厳しい修行を行う。
- 活動の場を市中、特に市井(しせい:一般庶民の生活する町中)とし、多数の民衆を相手に説経するのが得意でした。そのため「市聖(いちひじり)」とも呼ばれます。
- 歴史的意義: 権力を背景とする既成仏教の組織からは、体制を乱す危険人物と見なされ迫害されることもありましたが、民衆は、その屈しない姿勢を歓迎し、篤く信仰しました。
- 代表的な人物: 平安時代に、庶民のために阿弥陀信仰を広めた**空也上人(くうやしょうにん)**などが有名です。
聖人の活動が、貴族だけでなく一般庶民に仏教を広める上で、大きな原動力となりました。
おわりに:用語を知って巡る、一歩深い京都の旅へ
「声明」「僧録」「聖」という三つの用語は、それぞれ文化・政治・庶民信仰という異なる側面から、京都の仏教史を読み解くカギとなります。これらの知識を持って京都のお寺を訪れると、その歴史の奥深さがより鮮明に見えてくるはずです。

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前述の練習問題の解答☆
- 声明(しょうみょう)
- 円仁(えんにん、慈覚大師)
- 僧録(そうろく) または 僧録司(そうろくし)
- 春屋妙葩(しゅんおくみょうは)
- 空也上人(くうやしょうにん)

