昼は朝廷、夜は冥界の役人?平安の異端児・小野篁と「六道の辻」の物語#1142

昼は平安京の役人、夜は地獄の冥官……。そんな荒唐無稽な伝説を持つ天才、小野篁(おののたかむら)をご存知でしょうか?時の天皇に背き隠岐へ流されながらも、類まれな才能で都へ返り咲いた「反骨の士」。京都・六道珍皇寺に残る「冥界通いの井戸」の謎とともに、彼が歩んだ波乱万丈な生涯と不思議な足跡を辿ります。

この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
  • 第1問: 小野篁が遣唐使の任務を拒否し、嵯峨上皇の怒りを買ったことで流された島はどこでしょうか?
  • 第2問: 小野篁が隠岐へ向かう際に詠んだ、「わたの原 八十島かけて…」で始まる和歌は、何という歌集(撰集)に収録されていますか?
  • 第3問: 小野篁が夜な夜な冥界へ通うために使ったとされる「冥土通いの井戸」がある、東山区の寺院はどこでしょうか?
  • 第4問: 小野篁が「六道の辻」にある井戸を通って向かい、生前の罪を裁く王の補佐をしていたとされる場所(世界)はどこでしょうか?
  • 第5問: 病死した藤原良相が、冥界で小野篁の執り成しによって蘇生したというエピソードが記されている、平安時代末期の説話集は何でしょうか?

☆回答は記事の最後にあります。

平安時代、188cmという当時としては並外れた巨躯を誇り、文武両道に秀でた一人の天才がいました。その名は、小野篁(おののたかむら)

百人一首でも知られる彼ですが、その素顔は時の天皇にすら盾突く「反骨の士」であり、夜な夜な地獄へ通う「冥界の役人」でもありました。今回は、そんな彼の波乱に満ちた生涯と、京都に残る不思議な足跡を辿ります。

1. 帝を怒らせた「反骨の天才」:隠岐への流罪

小野篁の人生を大きく変えたのは、承和5年(838年)の遣唐使をめぐる事件でした。

遣唐副使に任命された篁でしたが、正使である藤原常嗣が「自分の船が壊れたから、お前の船と交換しろ」と理不尽な要求を突きつけます。これに激怒した篁は、なんと乗船を拒否。さらに、遣唐使の危険性や朝廷の体制を皮肉った漢詩『西道謡(さいどうよう)』を詠んで、嵯峨上皇の逆鱗に触れてしまいます。

その結果、篁に下されたのは最高刑である隠岐の島への流罪でした。

2. 絶望の海で詠まれた、再起への誓い

都を追われ、荒れ狂う冬の海へ漕ぎ出す際、彼は一首の和歌を詠みます。これが、今も私たちの耳に残るあの有名な歌です。

わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)の釣舟 (広大な海原へ、多くの島々を目指して漕ぎ出したと、都にいる大切な人へ伝えておくれ、漁師の釣り船よ)

「罪人」として流される悲劇的な状況にありながら、その歌声はどこか凛としており、彼の不屈の精神を感じさせます。事実、彼の才能を惜しんだ朝廷によってわずか2年で赦免され、都へ奇跡のカムバックを果たすことになるのです。

3. 京都・六道珍皇寺に残る「冥界通い」の伝説

京都に戻った篁には、驚くべき噂がつきまといます。「彼は夜な夜な、井戸を通って地獄へ行き、閻魔大王の補佐(裁判の助言)をしている」というものです。

その舞台となったのが、東山区にある六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)。 この寺がある場所は、古来より「あの世とこの世の境目」とされる六道の辻。境内には、篁が冥界への入り口として使ったとされる**「冥土通いの井戸」と、現世へ戻る際に使った「黄泉(よみ)がえりの井戸」**が今も静かにたたずんでいます。

4. 閻魔大王をも動かした?篁の不思議な力

篁の伝説は単なる噂にとどまりません。 ある時、かつて自分を助けてくれた恩人・藤原良相(ふじわらのよしすけ)が病死し、閻魔大王の前に引き出されました。すると、そこにはなんと冥官として働く篁の姿が! 篁の強い執り成しによって、良相は再び現世に蘇ることができた……という「今昔物語」のエピソードは、彼の義理堅さと、生死の境を越える圧倒的な存在感を物語っています。


まとめ:京都の歴史に刻まれた「野狂」の魅力

知性、武勇、そして権力に屈しない強靭な意志。小野篁という人物を知ると、京都の街角にある古い井戸や石碑が、急に「異界への扉」のように見えてくるから不思議です。

「京都検定」の勉強中に出会うエピソードも、こうした背景を知るとぐっと身近に、そしてドラマチックに感じられますね。次に京都を歩くときは、ぜひ「六道の辻」で、昼夜二つの世界を股にかけた天才の足跡を感じてみてください。

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ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳を運営しています。
京都市出身、現在は東京都江東区に住まい、妻と一緒に小学生&保育園の二人の子育て中。両親の介護で京都との二拠点生活です。
「野菜作りを楽しむ」をコンセプトにした家庭菜園や農体験の運営を仕事として10年やってきました。今は独立して様々な情報発信などのお仕事と、不動産の管理などをしています。

前述の練習問題の解答☆
  1. 隠岐(隠岐の島) (承和の遣唐使事件により、838年に配流されました)
  2. 小倉百人一首 (『古今和歌集』にも収録されていますが、一般的には百人一首の札として有名です)
  3. 六道珍皇寺 (「六道の辻」の中心的な寺院です)
  4. 冥界(地獄・あの世) (閻魔大王の補佐をしていたという伝説が残っています)
  5. 今昔物語(今昔物語集) (巻第20の第45話にその逸話が残されています)

Posted by ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳