母に贈った補聴器が使われなかった理由|難聴と認知症、介護の葛藤#813【介護振り返りnote010】
「良かれと思って贈った補聴器を、なぜ母は付けてくれないのか」。2021年の母の日、難聴が進み会話が噛み合わなくなった母のために新しい補聴器をプレゼントしました。一時はスムーズな会話を取り戻したものの、翌日には再び引き出しの奥へ。実体験から見えてきた、高齢者の「聞こえのケア」の難しさと、母の繊細な心情を綴ります。
2010年代までは、母と特に違和感なく会話ができていました。けれど、2020年が近づく頃から、少しずつ異変を感じ始めました。
こちらが話しかけても「え?」と聞き返されることが増え、電話越しでもうまく伝わっていないことが多くなっていたように思います。特に左耳が聞こえにくかったのかもしれません。
実家に帰省したとき、テレビの音量がやけに大きくなっていたことにも気づきました。最初は歳のせいかと思っていたけれど、父にそれとなく話してみたところ、実は以前から母の「耳の聞こえ」に問題があったそうです。
何年か前には、父と一緒に耳鼻科へ行き、補聴器も購入していたとのこと。
母に聞いてみると、「これのことね」と、すぐに補聴器を出してきました。
補聴器は最初こそ違和感があるけれど、慣れてくると手放せないという話もよく聞きます。
近所の同級生のお父さんも、比較的若いうちから補聴器を使い始めて「世界が変わった」と話していたのを思い出します。
それなのに、なぜ使っていないのか。
母に理由を聞くと、「耳に何かついてるのがうっとうしいから」とのこと。
確かに、母は昔からアクセサリーや時計など、体につけるもの全般が苦手でした。
たとえ聞こえづらくても、「耳に何かつける不快感」のほうが耐えられないというのです。
聞こえづらさを放置した結果、外出時の危険も増し、会話が成り立たないことでストレスや誤解も生まれました。
その状態で想像だけを頼りに暮らそうとすることが、結果的に認知症の進行を早める一因になったのではないかと、今になって思います。
そんな背景もあり、2021年の春。ちょうど母の日のプレゼントを兼ねて、母と一緒に再び耳鼻科へ行くことにしました。
そして、「軽くてよく聞こえる」「雑音が入りにくい」という最新の補聴器を購入。以前のものよりも小型で、使いやすいタイプでした。
ただ、この頃には母の記憶や管理能力に不安が出てきていて、補聴器の充電や保管方法をちゃんと覚えてくれるか、少し心配でもありました。
それでも、購入した帰り道、母と交わした会話はとてもスムーズで、久しぶりに普通のやり取りができた気がして嬉しかったのを覚えています。
……ところが、残念なことにその翌日から母は補聴器を使わなくなってしまいました。
理由はまたしても「うっとうしいから」。
「必要な時だけ使う」と言ってはいたものの、使い方も充電方法も身につかないまま、結局この補聴器が活躍することはありませんでした(苦笑)。
補聴器を嫌がる高齢者の心理とその影響
高齢の親が補聴器を嫌がる理由には、「違和感」「面倒さ」「恥ずかしさ」などさまざまな要素があると感じます。
けれども、聞こえないことが生活や認知に与える影響は決して小さくありません。
周囲の家族が「うるさいな」「何度も聞き返されるな」と感じたときは、単なる老化ではなく、「聞こえの変化」を疑って、早めに受診や対応を考えることが大切だと、母の例から実感しています。

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