文学でめぐる千年の都。物語に描かれた京都ゆかりの作家たち#1115
京都は古くから多くの文豪に愛され、数々の名作の舞台となってきました。夏目漱石が眺めた比叡山の景色や、川端康成が描いた北山杉の美しさ、そして江戸時代の知恵が詰まった地誌の世界まで。本記事では、京都ゆかりの作家とその代表作を整理してご紹介します。物語の背景を知れば、いつもの古都歩きがより奥深いものになるはずです。
- 夏目漱石の小説『虞美人草』の冒頭で、主人公の甲野と宗近が登っている京都の山はどこか?
- 昭和25年に実際に起きた事件を題材に、三島由紀夫が金閣の美と見習い僧の心理を描いた小説のタイトルは何か?
- 川端康成の小説『古都』において、苗子と千重子の姉妹が育った場所として描かれているのは、京都の「室町」と、もう一箇所はどこか?
- 谷崎潤一郎の小説『細雪』の作中、主人公一家が訪れてしだれ桜の美しさを絶賛している神社の名前はどこか?
- 1658年(万治元年)に中川喜雲が著した、当時の京都の名所案内記の代表作は何というか?
☆回答は記事の最後にあります。
京都は古くから多くの作家を惹きつけ、数々の名作の舞台となってきました。今回は、古典から近代文学まで、京都の情趣を鮮やかに描き出した作家とその代表作をご紹介します。
1. 夏目漱石:比叡山から始まる物語
近代文学の巨匠・夏目漱石は、たびたび京都を訪れ、その滞在記録も多く残されています。
- 代表作:『虞美人草』 冒頭、主人公の甲野と宗近が比叡山に登るシーンから物語が動き出します。漱石の目に映った当時の京都の空気感が、格調高い文体で綴られています。
2. 三島由紀夫:金閣の美に囚われた魂
三島由紀夫が描いた京都は、美しさと滅びの美学に満ちています。
- 代表作:『金閣寺』 昭和25年に実際に起きた放火事件を題材にした、三島の代表作。金閣の圧倒的な美しさと、それに執着し苦悩する見習い僧の倒錯した心理描写は、今なお読者に強い衝撃を与えます。
3. 川端康成:北山杉の里と双子の数奇な運命
ノーベル賞作家・川端康成は、失われゆく京都の伝統美を繊細に描き出しました。
- 代表作:『古都』 室町と北山、離れて育った双子の姉妹の再会と運命を描いた作品。北山杉の美しさが全国に知られるきっかけともなりました。北区の北山杉資料館には、彼の記念碑が今も静かに佇んでいます。
4. 谷崎潤一郎:平安神宮の桜に映える伝統美
「美」を追求し続けた谷崎潤一郎にとって、京都は理想の美が息づく場所でした。
- 代表作:『細雪』 戦時中の軍部による中断を乗り越え完成した大作。主人公一家が平安神宮のしだれ桜を愛でる場面はあまりにも有名です。東京にはない、上方ならではの伝統美が讃えられています。
5. 森鴎外:高瀬川を流れる悲哀
森鴎外もまた、歴史に取材して京都を舞台にした名作を残しています。
- 代表作:『高瀬舟』『興津弥五右衛門の遺書』 罪人を運ぶ「高瀬舟」を舞台に、安楽死や知足(足るを知る)を問うた物語。木屋町を流れる高瀬川を歩く際、ふと思い出したくなる一冊です。
江戸時代の知恵袋:京都の暮らしを記録した人々
現代のガイドブックの先駆けともいえる、京都の地誌や風俗を残した作家たちも忘れてはなりません。
喜多川守貞:江戸と上方を見比べた風俗考証家
大坂に生まれ、江戸で家督を継いだ喜多川守貞は、両都市の文化の違いを鋭く観察しました。
- 著作:『守貞謾稿(近世風俗志)』 35巻にも及ぶ大著で、当時の庶民の暮らしを知るための第一級資料。図解も豊富で、江戸時代の百科事典のような存在です。
水雲堂狐松子:京都の百科事典の生みの親
貞享2年(1685年)に刊行された『京羽二重(きょうはぶたえ)』の著者です。
- 内容: 町ごとの職人や売り物、名所旧跡、年中行事まで網羅されており、当時の京都を知るための「完全ガイド」として重宝されました。
浅井了意:仮名草子の第一人者
京都の僧侶でありながら、大衆向けの「仮名草子」で人気を博した作家です。
- 著作:『浮世物語』『京雀』 京都の地誌『京雀』などを通じ、当時の名所案内を面白おかしく、かつ詳細に伝えました。
中川喜雲:医師が綴った京都案内
丹波出身の医師であり、俳諧も嗜んだ文化人です。
- 著作:『京童(きょうわらべ)』 万治元年(1658年)に刊行されたこの本は、当時の京都名所を案内する読み物として親しまれ、のちに続編も作られるほどの人気を博しました。
物語を知ってから京都を歩くと、ただの景色が「舞台」へと変わります。 次の京都旅行では、一冊の文庫本を鞄に忍ばせてみてはいかがでしょうか。
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