京都特有の儀式、風習#945

京都特有の「おため」や「長暖簾」といった風習から、「お宮参り」「かしの式」などの儀式まで、京都検定の出題範囲にもなる独特の文化を解説。これから京都検定を目指す方が効率よく学べるように、歴史ある儀式や生活習慣を分かりやすく整理しました。

この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
  1. 当方の祝い事などで品物をいただいた際、その価格の1割程度をお返しする京都の風習を何と呼びますか。
  2. いただいた品物の価格の半分をお返しする際、慶びごとが移りますように、という願いが込められている風習を何と呼びますか。
  3. 京都のお宮参りで、産着の肩に白紙で包んだ扇などを麻糸でくくり、お祓いが済んだ後にくくりつける場所はどこですか。
  4. 祇園祭の稚児(ちご)が代表的な例として知られる、社寺の周囲や本殿の周りを何度も回って祈願する儀式は何ですか。
  5. 島原の太夫が客の座に古式ゆかしく顔見せする儀式を何と呼びますか。
  6. 妊娠5か月目の「戌の日」から妊婦が締める帯で、「帯祝い」とも呼ばれるものは何ですか。
  7. 「斎肌帯」と書いて「イハダオビ」と発音する場合、この言葉に込められた、「不浄、穢れを謹んで清浄を保つ」という意味を持つ漢字一文字は何ですか。
  8. 京都の三条室町あたりの大規模な呉服問屋などで、商いの規模の大きさや利潤の高さを誇る印として店先につるされた、地面に届くくらいの長い暖簾を何と呼びますか。
  9. 「三条室町 効いて極楽、見て地獄」という言葉に続く、商家の内情の厳しさを表す部分は何ですか。(漢字〇文字)
  10. 人の頭を表すとも言われ、踏むことは人の頭を踏むも同然として忌み嫌われ、出世できないと言われるものは何ですか。

☆回答は記事の最後にあります。

京都の歴史と文化の中で育まれた独特の儀式や風習、生活習慣についてまとめます。

1. 贈答・返礼に関する風習

〇おため(御賜め、御多芽)

  • 概要: 当方の祝い事などでご近所、知人友人から品物をいただいた際、いただいた品物の価格の1割程度お返しすること。
  • 返礼品: 金額に限らず、半紙の束などをお返しすることもある。
  • 半返し: いただいた品の価格の半分をお返しすること。結婚の祝いの頂き物に対する謝礼などに見られ、**「慶びごとが移りますように」**という願いが込められている。

2. 人生儀礼に関する風習

〇岩田帯(いわただい)

  • 概要: 妊娠5か月目の**「戌の日」から妊婦が腹に締める帯。「帯祝い」「着帯祝い」**とも呼ばれる。
    • 犬は多くの子を安産で産むとされることに由来。
  • 名称と意味:
    • 「斎肌帯(イハダオビ)」: 「斎」は不浄、穢れを謹んで清浄を保つ意。「肌」は妊婦の皮膚、身体を清浄に保ちなさいという意味が込められている。
    • 「結肌帯(ユイハダオビ、ユハダ、イハタ)」と転訛(てんか)したり、「木綿肌帯(ユウハダオビ)」と書かれたりもする。肌の清浄を保つために木綿の布を腹に巻くという意。
  • 関連寺院: 光念寺(北区紫野)、善願寺(伏見区醍醐)、十輪寺(大原野小塩)、広見寺(西京区御陵)などの地蔵菩薩は**「腹帯地蔵」**と呼ばれ、安産祈願の信仰を集める。

〇お宮参り

  • 時期: 産後30日前後に行う。
  • 風習: 産着の肩に白紙で包んだ扇などを麻糸でくくり、お祓いが済むと菱格子などにくくりつける。

〇お祝い(訪問の暗黙の了解)

  • 訪問時間: 大安や先勝、友引の午前中に訪れることを暗黙の了解としている。

3. 特殊な儀式・行事

〇お千度詣り(おせんどまいり)

  • 概要: 社寺の周囲や本殿の周りを何度も回って祈願する行事。
  • : 代表的なのは祇園祭の稚児(ちご)のお千度の儀式

〇かしの式

  • 概要: 島原の太夫が客の座へ、古式ゆかしく顔見せする儀式。
  • 内容: ろうそくの灯りのもと、太夫が座敷に出て優美な所作で盃を手に取り飲むしぐさを行う。
  • 関連建物: 島原で残る建物として**角屋(すみや、重要文化財、角屋もてなしの文化美術館として一般公開)輪違屋(わちがいや)**がある。

4. 商家の慣習・生活様式

〇長暖簾(ながのれん)

  • 背景: 豊臣秀吉が架橋した本格的な三条大橋(東海道の西の起点)周辺、特に三条室町(大規模な呉服などの問屋が集積)に店を開くことは京都の商人にとって最高の誇りであった。
  • 役割: 元々は日よけ、塵除けとして店先につるしていた暖簾が、商いの中宮規模の大きさ、利潤の高さを誇る印の役割を果たすようになった。
  • 特徴: 木綿の紺地に商品や屋号、商標を白く大きく染め抜き、地面に届くくらいの丈の長いものが長暖簾。丈の短いものは暖簾(のれん)と呼ぶ。
    • 古ければ古いほど店の信用の高い印とされ、少々の破損に耐えられる重厚な暖簾が良しとされた。
  • 慣用句: 三条室町に店を出せない小商人にとっては羨望の的、破産した商人には恨みの的でもあった。その実態を表現する言葉として以下がある。
    • 「三条室町 効いて極楽、見て地獄、お粥かくしの長暖簾」
      • 「家紋を付けた立派な長暖簾をかけても奥ではお粥をすすっている」(質素な生活)
      • 「室町の呉服問屋の内情は、長暖簾のように華やかではなく、厳しく辛く、生活は質素で慎ましかった」という戒め。

〇敷居

  • 風習: 敷居は人の頭を表すとも言われ、踏むことは人の頭を踏むも同然で、出世できない、運を逃がすと言われ忌み嫌われる。

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この記事を書いた人
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ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳を運営しています。
京都市出身、現在は東京都江東区に住まい、妻と一緒に小学生&保育園の二人の子育て中。両親の介護で京都との二拠点生活です。
「野菜作りを楽しむ」をコンセプトにした家庭菜園や農体験の運営を仕事として10年やってきました。今は独立して様々な情報発信などのお仕事と、不動産の管理などをしています。

前述の練習問題の解答☆
  1. おため(御賜め、御多芽)
  2. 半返し
  3. 菱格子
  4. お千度詣り(お千度)
  5. かしの式
  6. 岩田帯(いわたおび)
  7. 長暖簾(ながのれん)
  8. お粥かくしの長暖簾
  9. 敷居

2025年11月3日

Posted by ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳