義歯作りが始まった2025年春──母と父、ふたりの「入れ歯ストーリー」#904 mission100
2025年春。
母の前歯が折れてしまい、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に訪問診療の形で歯科医に来てもらい、義歯作りが始まりました。診療は10日〜2週間に1回のペース。歯型を取り、噛み合わせを調整し……と何度か繰り返し、約1か月後、ついに母の「初めての入れ歯」が完成しました。
しかし、その矢先──次なる“歯のトラブル”がやってきたのです。

母の義歯生活、始まるも…現実はなかなか難しい
母は認知症のため、自分が入れ歯を使っているという認識がありません。
義歯はワイヤーで固定するタイプで、本人が自力で着脱するのは難しい状態です。
現在は、以下のようなルーティンで装着・取り外しをしてもらっています。
- 朝:起床後すぐの朝食は義歯なしで食事
- 午前:薬のタイミングに合わせ、看護師さんが義歯を装着
- 昼食・夕食:義歯を付けた状態で食事
- 夜:夕食後の薬と一緒に、看護師さんが義歯を外してケースで洗浄
当初は、朝のスタッフ巡回時に装着する予定でした。けれど、母が違和感を訴え、「そんな話聞いてない」と拒否する場面が何度か続きました。
その様子を父が見て、「無理に付けさせる必要はない」と口を挟んでしまい、母が不安定になることも。施設の管理者さんからは「お母さま一人なら問題ないのですが、お父さまの言動で装着が定着しにくく…」と相談を受けました。結果として、朝ではなく薬の時間帯への変更で対応し、今はようやく安定してきています。
今度は父に…まさかの「入れ歯崩壊事件」
母の義歯生活が落ち着いてきた頃、僕のもとに父から電話がかかってきました。
「お母さん、まだ歯のことをブツブツ言ってるぞ。次の診察いつや?」
そんな愚痴めいた話の中で、唐突に「わしの入れ歯が外れてもう使えへん」と言ってきたのです。父の入れ歯に異変が起きていました。
父は数年前からほとんど歯が残っておらず、ほぼ総入れ歯。今回の異変で、食事も会話もままならない状態に。
僕は東京にいたため、京都の父の様子をすぐには見に行けませんでした。サ高住のスタッフに状況を確認してもらうと、想像以上に深刻でした。
- 入れ歯のワイヤーが変形し、残っている歯根の形に合わず再装着できない
- 僅かに残る歯根と歯茎だけでは空気が漏れ、発話が困難
- 固形物の食事も難しく、食事の形態を変更する必要がある
急きょケアマネージャーさんに連絡をとり、母とは別の歯科医による訪問診療を予約。タイミングを合わせて僕も京都へ帰ることにしました。施設の食事も、しばらくは刻み食に変更してもらい、父の負担が少しでも減るように対応してもらいました。
思わず苦笑い…因果応報?
内心では少しだけ──いや、ほんのちょっとだけ、こんなふうに思ってしまった僕がいました。
「母の入れ歯の装着に、あれこれ横から口出してばかりいたから…バチが当たったんじゃないか(笑)」
もちろん、父が困っているのを見過ごすことなんてできません。けれど、親の介護に関わっていると、時にこうした“巡り合わせ”のような出来事が起こるものなんだと、しみじみ感じた出来事でもありました。
まとめ|高齢者の義歯ケアは「本人+家族+施設の連携」がカギ
今回、母と父それぞれの入れ歯トラブルを通して感じたのは、「義歯は作って終わりじゃない」ということ。認知症や体の変化、本人の気分や理解度、家族の関わり方──さまざまな要素が絡み合って、ようやく“日常に溶け込む”ものなのだと実感しました。
訪問診療、施設スタッフの連携、家族の見守り。どれか一つが欠けても、うまく回らない現実があります。
僕と同じように、親の歯科ケアに関わる立場の方の参考になれば幸いです。
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