第156回 認知症の母に笑顔を。京都での訪問美容体験とマイナンバーカード写真の再挑戦#1217
認知症が進むと、かつて当たり前だった「美容院へ行くこと」が難しくなる場合があります。京都で暮らす母の髪が伸び放題になっていた時期を経て、個別で依頼した「訪問美容」によって母の表情が明るくなった体験談です。整った髪で、マイナンバーカードの写真更新にも挑戦した僕の心境を綴ります。
昭和の母の面影と、変化していった身だしなみ
僕が子供の頃から、母といえば「短い髪にパーマ」が定番のスタイルでした。昭和後期から平成初期にかけてよく見られたお母さんのイメージそのままです。母は暑がりで汗をかきやすい体質だったこともあり、首周りをすっきりさせるショートスタイルは、母なりのこだわりだったのだと思います。
2015年に乳がんの治療を受け、抗がん剤の影響で一度は髪を失った母でしたが、治療後は無事に髪も復活しました。当時はまだ、定期的に美容院へ通い、身なりを整える余裕がありました。
しかし、2020年頃から認知症の初期症状が現れ始めると、状況が少しずつ変わり始めました。一人で美容院へ行くことが困難になり、次第に身なりを気にしなくなった母。髪は伸び、かつての面影が少しずつ薄れていくのを、当時の僕はどこか見過ごしてしまっていたのかもしれません。
サ高住への入居と、訪問美容との出会い
2024年、母はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)へ入居しました。施設の管理者の方からの勧めで、月に一度施設に来る訪問美容を利用することになったのです。
久しぶりに髪を短くカットした母は、白髪混じりではあるものの、80代とは思えないほど豊かな髪を湛えていました。パーマこそあてていませんが、すっきりとした髪型になった母を見ると、不思議と数歳若返ったような気がして、僕の心も少し軽くなったのを覚えています。
個別依頼で手に入れた、母にとっての心地よい時間
その後、デイサービスの日程との兼ね合いで施設の訪問美容が受けられず、再び髪が伸び放題になってしまう時期がありました。そのタイミングで作成したマイナンバーカードの写真は、ひどく老け込んだ表情で写っており、それを見るたびに僕は申し訳ないような、切ない気持ちになっていました。
そこで2025年2月、僕はネットで京都市内を拠点に活動されている美容師さんを自ら探し、個別で訪問美容を依頼することにしました。
この選択が大正解だったのです。来てくださった美容師さんは非常にフットワークが軽く、認知症が進んでいる母に対しても優しく丁寧に接してくださいました。母の部屋で30分ほどの施術。シートを敷いて手際よくカットしてくださるので、後片付けもスムーズです。さらにアロマオイルを使ったマッサージまで施してくれるため、母もリラックスした表情を見せ、脳への良い刺激になっているようでした。
整った髪で、未来へ残す「今の母」
現在は2〜3ヶ月に一度のペースで、この美容師さんに継続してお願いをしています。髪が整うことで母の清潔感が保たれ、僕自身の気持ちも前向きになりました。
そんな生活のリズムが整ってきた頃、僕はあることを思い立ちました。バタバタした時期に撮ってしまった、あの「老け込んで見えるマイナンバーカード」の写真を、今のすっきりとした髪型の写真に変更してみようということです。
身なりを整えることは、本人の自尊心を守るだけでなく、支える家族の心にも平穏をもたらしてくれるのだと思いました。訪問美容という選択肢のおかげで、今の母らしい姿を記録に残せそうな気がしたのでした。
あわせて読みたい記事
おすすめの書籍
今回のブログ記事前後の関連記事