冬の夜、認知症の母がサ高住を「脱走」。父が引き寄せた奇跡と地域の絆#1195
2025年12月、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に入居していた母が、突然施設を抜け出し行方不明になるという事件が起きました。凍てつく寒さの中、母を救ってくれたのは、かつて暮らした地域の温かい人々と、今は亡き父の導きだったのかもしれません。事件から一週間、お礼回りと対策会議のために訪れた京都で、僕が感じた「介護の現実」と「人の縁」についての回想録です。
冬の京都で起きた、母のサ高住「脱走」事件
2025年の12月、僕の携帯に飛び込んできたのは「お母様が施設からいなくなりました」という、血の気が引くような連絡でした。母は認知症を患い、サ高住での生活を始めていましたが、目を離した隙に自動ドアを通り抜け、かつて住んでいた実家の方へと向かってしまったのです。
幸いなことに、地域の方々の迅速な助けがあり、母は無事に保護されました。事件から翌週、僕は御礼を伝えるため、そして今後の再発防止策を話し合うために、冬の京都へと向かいました。
亡き父が呼び寄せた?お寺の住職が語る不思議な縁
まず向かったのは、母を保護してくださった実家近くのお寺です。住職は、当時の状況を静かに振り返ってくださいました。
「あの日は本当に寒かった。あと数十分見つかるのが遅かったら、命に関わっていたかもしれませんよ」
住職の言葉に、改めて事の重大さを痛感しました。お寺では住職の奥様が、凍えていた母に自分のカーディガンを羽織らせて守ってくださっていました。「古いものだから返さなくていいよ」という温かいお言葉に、胸が熱くなります。
住職は、今回の出来事について不思議な解釈をされていました。 「お父さんの四十九日前やったからね。お父さんが寂しくてお母さんを呼んだんや。でも鍵がなくて家に入れへんお母さんを見て、お父さんが僕を呼んだんやろう」
科学的には、葬儀などの記憶が母の中で繋がり、タクシーに乗ってしまったのだと思います。けれど、仏壇の前に父のお骨があるこのタイミングでの出来事に、僕は「その通りだ」と深く納得せざるを得ませんでした。
同級生のお母さんの叱咤と、介護施設の現実
続いて、母をタクシーで施設まで送り届けてくれた僕の同級生のお母さんを訪ねました。感謝の印として、かかったタクシー代を「お車代」として持参したのですが、彼女は領収書の分だけを受け取り、「あとはお互い様だから」と笑ってくださいました。
同時に、彼女は施設に対しても毅然とした態度を取ってくれていました。 「施設の人にも言っておいたよ。外に出さないように管理するのが仕事でしょう。お母さんがかわいそうや、って」
その言葉は、息子である僕の心にも深く刺さりました。確かに、預けている家族としてはその通りです。しかし一方で、僕は施設側の限界も理解していました。どれだけ注意を払っていても、他の利用者の出入りに紛れて自動ドアを抜けてしまうのを100%防ぐのは、今の介護現場では非常に困難なことなのです。
まとめ:再発防止に向けて僕が思ったこと
地域の人々の優しさに触れた後、僕はサ高住側との打ち合わせに臨みました。 今回の事件を単なる「事故」として終わらせるのではなく、どうすれば自由と安全を両立できるのか。監視を強めるだけが正解ではない介護の難しさを、改めて突きつけられた気がします。
冷たい冬の風が吹く京都で、多くの人に助けられて繋がった母の命。人の温かさと、亡き父が守ってくれた不思議な縁に、ただただ感謝するばかりの一日となりました。これからは、施設任せにするのではなく、僕自身ももっと母の心に寄り添いながら、新しい対策を練っていかなければならないと強く思ったのでした。
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