第116回 91歳の父に現れた「幻覚」と向き合う。加齢による認知機能の衰えと家族の葛藤 #1177

91歳を迎えた父に現れた、存在しないはずの「小僧」や「売り子」の姿。加齢に伴う認知機能の低下は、時として本人にしか見えない鮮明な幻覚を引き起こします。施設への入居、周囲への相談、そして医療的介入の難しさ。同じ悩みを持つご家族へ向けて、わが家のリアルな体験談を綴ります。

加齢とともに変化する父の日常

91歳を超えた父は、身体の衰えとともに、少しずつ認知機能の弱まりが見られるようになってきました。5年前から認知症を患っている母の症状とは異なり、父の場合は、いわば「年齢相応の衰え」が静かに進行しているような印象でした。

最近では、同じ話を何度も繰り返したり、耳が遠いためにテレビの音量が極端に大きくなったりすることが増えました。会話をしていても、以前なら通じていた言葉が理解できなくなる場面も目立ち始め、コミュニケーションの難しさを感じる日々が続いています。

2022年頃から始まった「幻覚」の予兆

父が幻覚を口にするようになったのは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)へ移る前の2022年から2023年頃のことでした。当時はまだ晩酌のビールを楽しんでいたこともあり、「酔いのせいかな」と楽観視していた部分もありました。

自室で「死神が見える」と言う父に対し、私は「僕には見えないよ」と返していました。父は「若い奴には見えん、わしには見えるんや」と答える。その頃はまだ、その後の会話に支障が出るほどではなく、一つの不思議な現象として受け止めていたのです。

エスカレートする症状と具体的な「訴え」

しかし、2025年に入ると、その幻覚症状は明らかにひどくなってきました。 父の目には、以下のような光景が鮮明に映っているようでした。

  • 「部屋の中に小僧がたくさんいる」
  • 「入り口におばさんが立ってこちらを見ている」
  • 「ドアのところで売り子がお寺の土産を売っている」
  • 「勝手に部屋の入り口を工事された」

単に「見える」だけでなく、「勝手に居座られているから契約書を確認してほしい」「部屋を変えてほしい」といった、具体的かつ切実な要望を私や施設のスタッフにぶつけるようになったのです。父にとって、それらは間違いのない「現実」であり、無視できない問題となっていました。

施設長との対話と、医療介入の壁

マンションの施設長からは、「お父様にははっきりと見えているようです」との報告を受けました。部屋の移動についても検討されましたが、満室であることを理由に、まずは現状をなだめる形で対応していただきました。

根本的な解決策として、精神を落ち着かせる薬の処方が提案されましたが、そのためには「精神科の受診」が不可欠です。しかし、以前に精密検査を拒否した父の性格を考えると、外出を伴う受診は極めて困難であると予想されました。

結局、無理に連れ出すことは現実的ではないとの判断から、「もう少し様子を見る」という結論に至りました。高齢者のケアにおいて、本人の意思と医学的な処置のバランスをどう取るか。正解のない問いに向き合う日々は、まだ続きそうです。

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京都市出身、現在は東京都江東区に住まい、妻と一緒に小学生&保育園の二人の子育て中。両親の介護で京都との二拠点生活です。
「野菜作りを楽しむ」をコンセプトにした家庭菜園や農体験の運営を仕事として10年やってきました。今は独立して様々な情報発信などのお仕事と、不動産の管理などをしています。

Posted by ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳