彩りの系譜:京都の美を創り上げた「友禅染」三人の革新者たち#1119

京都の伝統美を代表する「友禅染」。その華やかな色彩の裏には、時代を切り拓いた三人の革新者たちの物語がありました。始祖・宮崎友禅斎から、近代化の父・広瀬治助、そして芸術性を極めた十二代西村總左衛門まで。京都の街を彩る友禅染の歴史と、その魅力を支える偉人たちの足跡を分かりやすく解説します。

この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
  1. 江戸時代初期に活躍し、多種類のデザインを考案して「友禅染の祖」と呼ばれた絵師は誰ですか?
  2. 明治時代に「写し友禅(型友禅)」を確立し、友禅染の大衆化と近代化に大きく貢献した人物は誰ですか?
  3. 広瀬治助が、糊に染料を混入した「色糊」を用いて模様を染める技法を開発した際、その美しさに魅せられたという輸入染料は何ですか?
  4. 12代西村總左衛門が経営を継ぎ、現在も三条烏丸に店を構える、京友禅の芸術性を高めた老舗呉服商の屋号は何ですか?
  5. 12代西村總左衛門が京友禅の図案作成を依頼した、岸竹堂や今尾景年らはどのような職業の人物たちですか?

☆回答は記事の最後にあります。

京都の街を歩くと、ふと目にする美しい着物の数々。その代名詞とも言える「友禅染」が、実はたった一人の天才から始まり、幕末・明治の革新者たちによって進化を遂げたことをご存知でしょうか。

今回は、京都が世界に誇る友禅染の歴史を彩る、三人の重要人物をご紹介します。


1. 友禅染の始祖:宮崎友禅斎(みやざき ゆうぜんさい)

友禅染の歴史を語る上で欠かせないのが、江戸時代初期に活躍した絵師・宮崎友禅斎です。

もともとは扇絵師として知られていた彼は、その卓越したデザインセンスを染め物の世界に応用しました。それまでの染め物は技法的な制約が多かったのですが、友禅斎は自由に絵を描くような「挿し友禅」の基礎を築き、多種多様な文様を考案しました。

彼の描く華やかで繊細なデザインは、当時の京都の人々を瞬く間に虜にし、その名を取って「友禅染」と呼ばれるようになったのです。まさに、伝統美のグランドデザインを描いたパイオニアと言えるでしょう。


2. 近代化の旗手:広瀬治助(ひろせ じすけ)

江戸時代の友禅染は一点ものの高級品でしたが、それを「芸術」から「産業」へと昇華させたのが、明治期の染色家・広瀬治助です。

「備治(びんじ)」と呼ばれた名工

幼い頃から友禅屋の「備後屋太兵衛」に奉公し、後に養子となって家業を継いだ治助。腕の良い職人として知られ、屋号から一字取って「備治」の愛称で親しまれました。博覧会に出品した魚介デザインの友禅が、京都府知事から表彰されるほどの実力者でした。

「写し友禅」の誕生と大衆化

明治維新後、治助は輸入された鮮やかな化学染料(洋紅など)に魅了されます。彼は、糊に染料を混ぜた「色糊」を使い、型紙で染める**写し友禅(型友禅)**を開発しました。

  • 1881〜1882年頃: 写し糊型染めの技法を確立
  • 功績: 高価だった友禅染の量産を可能にし、一般大衆へ普及させた

その後、近代的な友禅工場を建設するなど、京都の染色業界の近代化に生涯を捧げました。


3. 芸術性のプロデューサー:12代 西村總左衛門(にしむら そうざえもん)

技術が進化する一方で、友禅染に「最高の芸術性」を吹き込んだのが、京都の老舗・千總(ちそう)を継いだ12代 西村總左衛門です。

三条烏丸に店を構える千總の主として、彼は明治という新しい時代にふさわしい着物のあり方を模索しました。

日本画家とのコラボレーション

總左衛門は、**岸竹堂(きし ちくどう)今尾景年(いまお けいねん)**といった、当時の日本画壇を代表する画家たちに図案の作成を依頼しました。 超一流の絵師が描く構図を友禅に取り入れることで、着物を単なる衣服ではなく「纏う芸術品」へと引き上げたのです。

この試みによって、京友禅は国内外で高い評価を得るようになり、現代に続く高級ブランドとしての地位を不動のものにしました。


あとがき

一人の絵師から始まった自由な表現が、職人の技術革新によって人々の手に届くものとなり、さらには一流の芸術として磨き上げられていく。

次に京都で友禅染を目にしたときは、この三人の情熱を思い出してみると、その色彩がより一層深く感じられるかもしれません。

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ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳を運営しています。
京都市出身、現在は東京都江東区に住まい、妻と一緒に小学生&保育園の二人の子育て中。両親の介護で京都との二拠点生活です。
「野菜作りを楽しむ」をコンセプトにした家庭菜園や農体験の運営を仕事として10年やってきました。今は独立して様々な情報発信などのお仕事と、不動産の管理などをしています。

前述の練習問題の解答☆
  1. 宮崎友禅斎(みやざき ゆうぜんさい)
  2. 広瀬治助(ひろせ じすけ)
  3. 化学染料(洋紅など)
  4. 千總(ちそう)
  5. 日本画家

Posted by ロスジェネ40代の、あれこれ記録帳