維新の「置き去り」から近代化へ!京都を救い、創り上げた明治の政治家・実業家たち#1079
遷都による衰退の危機を乗り越え、京都を近代都市へと導いた明治の偉人たち。
この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
- 明治維新の「五傑」の一人であり、公武合体派から討幕派へと転じ、文久2年から慶応3年までの約5年間、洛北の岩倉村に幽棲していた公家の政治家は誰か。
- 東京遷都後、京都の衰退を憂慮し、御所と御苑の保存・公開を提言した人物が、景観保全のために桜や楓の植樹を提唱し、現在の風光明媚な景色に貢献している場所はどこか。
- 丹波国亀岡出身で、「京都の鉄道王」とも呼ばれた、京都株式取引所や京都鉄道株式会社の設立に尽力した明治時代の実業家・政治家は誰か。
- 田中源太郎が設立に関わり、日本初の市街電車となった会社は何か。
- 長州藩出身で、伊藤博文内閣で初代外務大臣に就任し、「鹿鳴館外交」を主導した政治家は誰か。
☆回答は記事の最後にあります。
岩倉具視が守り抜いた古都の景観、田中源太郎が創り上げたインフラ、そして井上馨が関わった中央政界の動きから、京都の再生と発展のドラマを読み解きます。
目次
はじめに:遷都の危機を乗り越え、京都を近代都市へ導いた人々
明治維新という激動の時代、天皇が東京へ移られた(東京遷都)ことで、京都は衰退の危機に直面しました。しかし、この困難な時代に、政治の表舞台で、あるいは京都の地で事業を起こすことで、古都の再生に情熱を注いだ人々がいました。
本記事では、彼らの功績を追いながら、京都がどのようにして近代都市へと生まれ変わったのかをたどります。
1. 倒幕の立役者であり、古都の景観を守った公家:岩倉具視(いわくら ともみ)
- 経歴のハイライト:
- 下級公家から、公武合体を経て討幕運動の黒幕へ転身。
- 王政復古を実現させ、新政府では右大臣という要職に就任。
- 岩倉使節団の特命全権大使として欧米を視察し、日本の近代化の礎を築きました。
- 京都との関わり:
- 尊皇攘夷派から命を狙われ、文久2年(1862年)から慶応3年(1867年)までの約5年間、洛北の岩倉村(現在の左京区)に幽棲していました。ここが**国指定史跡「岩倉具視幽棲旧宅」**として現存しています。
- 遷都後、京都の衰退を憂慮し、**「京都皇宮保存に関シ意見書」**を提出。御所と御苑の保存・公開を提言し、古都の伝統美を守ることに貢献しました。
- 特に嵐山の景観保全のため、桜や楓の植樹を提唱するなど、現在の美しい京都の景色にも影響を与えています。
- 中断していた葵祭を再開させました。
2. 明治の京都を創った「鉄道王」:田中源太郎(たなか げんたろう)
- 経歴のハイライト:
- 丹波国亀岡(現在の亀岡市)出身の廻漕問屋(かいそうどいや)の二男。
- 実業家として、京都の近代産業・インフラ整備に尽力しました。
- 政界でも活躍し、京都府会議員(議長)、衆議院議員(3期)、貴族院議員を歴任しました。
- 京都への多大な功績(実業家として):
- 京都株式取引所を開設(後の京都証券取引所)。
- 京都電燈、京都織物など、京都の主要企業の役員を兼任。
- 特に交通インフラの整備に情熱を注ぎ、**京都鉄道株式会社(初代社長)**を設立し、現在のJR嵯峨野線にあたる鉄道敷設・開業に貢献。「京都の鉄道王」とも呼ばれます。
- 日本初の市街電車である京都電気鉄道会社の設立にも関与しました。
- 現在の京都銀行の前身である亀岡銀行を設立。
- ゆかりの地:
- 彼の別邸は、後に料亭を経て、比叡山の麓にある瑠璃光院として改められました。
3. 近代財政を確立した長州閥の重鎮:井上馨(いのうえ かおる)
- 経歴のハイライト:
- 長州藩出身の藩士で、伊藤博文や山形有朋と同世代の政治家。
- 長州ファイブの一人としてイギリスに密航留学し、開国・近代化路線へ転換。
- 初代内閣制度が発足した第一次伊藤内閣で初代外務大臣に就任し、「鹿鳴館外交」を推進しました。
- 大蔵、内務など要職を歴任し、元老として政財界に強い影響力を持ちました。
- 実業界とも深くつながり、三井財閥の経営に関与するなど、政商を育てる役割も果たしました。
- 京都との関わり:
- 明治政府の財政基盤確立に尽力した人物であり、明治初期には**大蔵省と民部省を併合し「大大蔵省」**を誕生させ、国家建設に大きな役割を果たしました。
- 彼自身は京都出身ではありませんが、新政府の主要な財政官僚として、また元老として、京都のインフラ事業や経済にも間接的に大きな影響を与えました。
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前述の練習問題の解答☆
- 岩倉具視(いわくら ともみ)
- 嵐山
- 田中源太郎(たなか げんたろう)
- 京都電気鉄道会社
- 井上馨(いのうえ かおる)