🍵【茶の湯の精華】千家十職(せんけじっしょく)とは?三千家を支える名工たちの世界#1042
茶の湯の世界を深く知るには欠かせない存在「千家十職」。彼らは、千利休以来、三千家(表・裏・武者小路千家)の家元好みの茶道具を専門に作り続けてきた、選ばれし十の職人一家です。この記事では、茶碗師・楽吉左衛門や塗師・中村宗哲など、日本の伝統工芸の粋を集めた名工たちの歴史と役割を、分かりやすく解説します。
この記事内容から抜粋した練習問題5問☆
- 千家十職が茶道具を製作してきた、表千家、裏千家、武者小路千家の三つの家元を総称して何と呼びますか。
- 千家十職の職家が代々手がける茶道具の中で、茶碗を作る職方は何と呼ばれますか。
- 千家十職の歴史において、千利休によって製陶の職方に指名されたことがきっかけとなり、初代となった人物の氏名を答えてください。
- 茶道具のうち、棗(なつめ)や香合などの漆器を専門とする千家十職の職方を何と呼びますか。
- 千家十職の塗師である中村宗哲家が、交友のあった藤村庸軒の好みで作ったとされる棗の一つを、正式名称で答えてください。
- 千家十職の中で、**柄杓(ひしゃく)**や竹細工の茶道具を作る職方は何家ですか。
- 初代仁兵衛浄林に始まり、代々「清右衛門」を名乗る、茶釜を作る千家十職の職方を何と呼びますか。
- 千家十職の中で、棚物や水指などの木工品を作る職方は何と呼ばれますか。
- 初代の長次郎が利休の指示を受けて作った、わび茶で使う茶碗が始まりとされる焼物の名前を答えてください。
- 大西清右衛門家の二代浄清が、茶釜を製作していた茶人や大名の中で、織田有楽斎や小堀遠州らと並んで交流があったとされる武将出身の茶人の名を答えてください。
☆回答は記事の最後にあります。
目次
🌟「千家十職」とは?茶道具を支えるプロフェッショナル集団
「千家十職(せんけじっしょく)」とは、茶の湯を大成した千利休以来、その家系である三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)の家元好みの茶道具を専門に製作・修繕してきた、**十の職家(職人一家)**のことです。
三千家によって代々指定されたこれらの職家は、日本の伝統工芸の粋を集め、茶の湯の文化と美意識を今日まで支え続けています。
その始まりは、利休の時代に**樂長次郎(初代 楽吉左衛門)**が製陶の職方に指名されたことがきっかけとされています。
⛏️**【十職の顔ぶれ】千家十職の職方と代表的な家々**
千家十職は、扱う茶道具の分野によって、以下の十家に分かれています。
1. 楽吉左衛門家(らくきちざえもん)
- 職方:茶碗師
- 作:茶碗
- 特徴: 初代の長次郎が利休の指示を受けて、わび茶に用いる茶碗を作ったのが楽焼の始まりです。千家十職の中でも最も早くから利休に直接仕えました。
2. 中村宗哲家(なかむらそうてつ)
- 職方:塗師(ぬりし)
- 作:棗(なつめ)、香合など漆器
- 特徴: 初代宗哲は元和3年(1617年)生まれ。千家一統や**藤村庸軒(ふじむらようけん)**らと交友があり、庸軒好みの「凡鳥棗(ぼんちょうなつめ)」「望月棗」などの名品を制作しました。
3. 大西清右衛門家(おおにしせいえもん)
- 職方:釜師(かまし)
- 作:茶釜
- 特徴: 初代は仁兵衛浄林。江戸時代初期に京へ出て、三条の釜座(かまんざ)で茶釜づくりを始めました。二代浄清は古田織部や小堀遠州らの釜も手掛けています。代々「清右衛門」を名乗ります。
4. 中川浄益家(なかがわじょうえき)
- 職方:金物師(かなものし)
- 作:建水、蓋置など金属製の茶道具
- 特徴: 金工技術に優れ、茶道具以外の金属製品も手掛けました。
5. 黒田正玄家(くろだしょうげん)
- 職方:竹細工・柄杓師(ひしゃくし)
- 作:柄杓、竹製茶道具
- 特徴: 初代は七郎左衛門。小堀遠州に茶を学び、後に柄杓づくりの技を習得。代々「正玄」を名乗ります。
6. 駒沢利斎家(こまざわりさい)
- 職方:指物師(さしものし)
- 作:棚物、水指、箱物など木工品
- 特徴: 三代長慶の時代に宗旦(千利休の孫)の指示を受けて千家の指物を作り始め、四代利斎から千家十職に加えられました。
(※残りの四家は、土風炉師・永楽善五郎、袋師・土田友湖、表具師・奥村吉兵衛、一閑張細工師・飛来一閑です。)
💡なぜ「十職」が求められたのか?
茶の湯の世界では、わずかな道具一つにも深い美意識と用途に応じた機能が求められます。三千家が特定の職家を指定し、代々専属とすることで、以下の利点がありました。
- 家元好みの徹底: 家元が求める特定の美意識や寸法を正確に把握し、具現化できる。
- 最高の品質の確保: 一流の職人が代々技を磨き続けることで、常に最高の品質が保証される。
- 伝統の継承: 道具の製作技術だけでなく、茶の湯の精神も職人の側から支え、未来に伝えていく役割を果たしました。
彼らは単なる職人ではなく、茶の湯の歴史と美を体現する**「芸術家」**として、現代までその技と名を残しています。

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前述の練習問題の解答☆
- 三千家(さんせんけ)
- 茶碗師(ちゃわんし)
- 樂長次郎(らくちょうじろう)
- 塗師(ぬりし)
- 凡鳥棗(ぼんちょうなつめ) または 望月棗(もちづきなつめ)
- 黒田正玄家(くろだしょうげんけ)
- 釜師(かまし)
- 指物師(さしものし)
- 楽焼(らくやき)
- 古田織部(ふるたおりべ)


