引っ越し直前、父からの“中止連絡”――僕は新幹線で京都へ向かった#846【介護振り返りnote042】
引っ越し予定を目前に控えたある日、東京での滞在中に父から電話がありました。内容は衝撃的で、「引っ越しは中止にしてくれ」というものでした。

父とのやり取りの主旨は、おおむねこんな感じです。
- お母さんが「引っ越しのことを聞いていない」と言っている
- 「施設なんて見に行ってない」「まだまだ元気だから実家でいい」と言っている
- 「あの人(母)は絶対に行かないと思う」
- 「自分(父)はどうでもいい」
- 「こういうやり取り自体がもうイヤだ」
- 「まだ中止にできるだろう」
- 「お前(僕)が勝手に決めたんだから、ちゃんと話し合おう」
- 「もう疲れた、頼むわ」
これまでの人生で、父を電話で説得できたことは一度もありません。なので予定通り京都には戻り、実際に顔を合わせて話をしないと、という気持ちがありました。
とはいえ、このときばかりは僕も感情的になっていたのを覚えています。少し混乱しながらも、父にはこう伝えました。
「2人の安全と安心を考えての判断なんだ」
「これ以上の方法は今のところ思いつかない」
「責任をもってお母さんを連れていくから、任せてほしい」
そんな言葉を絞り出して、電話を終えました。
引っ越し予定は14日。僕が実家に戻るのは12日の朝。このタイミングでの一発勝負にかけるしかありませんでした。
ただ、引っ越しできる前提で準備は進めないといけません。消耗品や家電の買い出し、マンションへの荷受けなど、段取りは予定通りに進行中。にもかかわらず、心はどこか不安定で、精神的にかなり追い込まれてしまった感覚がありました。その晩は、あまり眠れませんでした。
この時点では、「中止」と言われたとはいえ、まだ可能性は残されている――そう思っていました。
知らず知らずのうちに、泣きながら電話していた相手が、以前お世話になったシニア住宅紹介のお助けマンさんでした(笑)。事情を話すと、彼はこう言ってくれました。
「よくある話ですよ。お母さんは見学したのを覚えていないだけ。お父さんも『初めてで最後の引っ越し』になるから、きっと不安なんです」
さらに、「息子さんが直接会って話せば、お父さんも落ち着かれると思いますよ」とも。
その言葉に救われるような思いがして、作戦を練り、気持ちを整理しながら、新幹線に乗り込みました。
この時の心境は、かつて会社員時代に難航する営業案件に向き合った時と、どこか似ていた気がします。先が見えない不安と、それでもやるしかないという覚悟。その両方を抱えながら、僕は京都へ向かいました。

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